営業では、準備していた通りに会話が進むとは限りません。
相手の反応。
質問。
価格への抵抗。
競合との比較。
社内事情。
実際の商談は、その場で変わります。
だから、
「営業台本なんて意味がない」
と思う人もいるかもしれません。
でも私は、台本は必要だと思っています。
台本通りに話すためではありません。
一度、自分の商材をどう説明するか考えておくためです。
今回は、心理学の原則をAIに整理させて、
自社商材に合わせた営業台本の“たたき台”を作る
という使い方を考えます。
営業台本は「読むもの」ではなく「準備するもの」
営業台本というと、
最初の挨拶からクロージングまで、
決められた文章をそのまま読むイメージがあります。
でも、BtoB営業では現実的ではありません。
相手によって課題も違うし、
決裁者なのか担当者なのかでも話は変わります。
それでも台本を一度作っておく意味はあります。
例えば、
- 最初に何を聞くか
- 相手の課題をどう深掘りするか
- 自社商品の価値をどう説明するか
- 価格をどう提示するか
- 断られたときにどう返すか
- 最後に何を確認するか
これを事前に考えてあるだけで、
商談中の余裕は変わります。
心理学の原則を営業に使う
今回参考にするのが、
ロバート・チャルディーニの『影響力の武器』などで知られている、
人が意思決定するときに影響を受けやすい心理的な原則
です。
例えば、
- 返報性
- 一貫性
- 社会的証明
- 好意
- 権威
- 希少性
など。
もちろん、
心理学を使って相手を無理に動かす、
という話ではありません。
重要なのは、
「顧客が安心して判断するために、どんな情報が必要なのか」
を考えることです。
例えば「社会的証明」を営業に落とす
人は、
「他の人も選んでいる」
という情報を判断材料にすることがあります。
営業で言えば、
- 導入企業数
- 同業他社の事例
- 同規模企業の実績
- 継続率
- 利用者の評価
などです。
例えば、
多くの企業に導入されています。
より、
同じくらいの規模の製造業では、すでに○社に導入されています。
の方が具体的です。
AIには、
自社商材のどの情報が「社会的証明」として使えるか
を考えてもらいます。
「権威」は肩書きを並べるだけではない
権威というと、
有名人や専門家の推薦を思い浮かべるかもしれません。
でもBtoBなら、
- 専門資格
- 業界での実績
- 公的認証
- 導入実績
- 技術力
- 受賞歴
- 第三者評価
なども材料になります。
ただし、
権威があるから買ってください
では弱い。
例えば、
ISO○○を取得しています。
だけではなく、
○○の認証を取得しているため、御社のセキュリティ基準にも合わせやすいです。
のように、
顧客にとって何が意味なのか
まで落とし込む必要があります。
「希少性」は煽りに使わない
希少性も営業では使われます。
ただ、
「今契約しないと損します」
のような煽り方は、BtoBでは逆効果になることもあります。
むしろ使いやすいのは、
- 補助金の期限
- 導入枠
- 製造能力
- サポート可能件数
- 法改正までの期間
- キャンペーン期間
など、
実際に存在する制約
です。
AIには、
「事実として説明できる希少性だけ使う」
と指示します。
「返報性」は先に価値を渡す
営業で返報性を使うなら、
単にプレゼントを渡すという話ではありません。
例えば、
- 無料診断
- 現状分析
- 比較表
- 業界情報
- 改善案
- 導入シミュレーション
など。
商談の前半で、
「この営業と話すと何か得るものがある」
と思ってもらう。
これも一つの形です。
AIに営業台本を作らせるなら、
最初から商品説明を始めるのではなく、
顧客に先に何を提供できるか
を考えさせます。
「一貫性」は顧客自身の言葉を使う
営業でよくあるのが、
相手の課題を聞いたあとに、
そのまま商品説明へ移ることです。
でも、
顧客が、
今は担当者ごとに管理方法が違っていて困っています。
と言ったなら、
後半で、
先ほど「担当者ごとに管理方法が違う」とおっしゃっていましたが、今回の仕組みならそこを統一できます。
と返す。
顧客自身が話した課題と、
提案内容をつなげます。
これは単なる話法というより、
商談に一貫性を持たせる
ということです。
AIには、
「ヒアリングした内容を後半の提案に必ず戻す」
という構造で台本を作ってもらいます。
まず自社商材をAIに理解させる
営業台本を作る前に、
当然ですがAIに商材を理解してもらう必要があります。
最低限、
- 商品・サービス概要
- 価格
- 主な機能
- 対象顧客
- 導入メリット
- 導入事例
- 競合との違い
- よくある質問
- 導入までの流れ
などを渡します。
ここが曖昧だと、
どれだけ良い営業台本のプロンプトを作っても、
中身は薄くなります。
AIには「心理学を使って売って」と言わない
これは重要です。
AIに、
「心理学を使って売れる営業台本を作って」
だけだと、
少し胡散臭い文章になりやすい。
だから、
心理学の原則をそのまま前面に出すのではなく、
営業のどの場面に使うか
を分けます。
例えば、
| 営業場面 | 使えそうな原則 |
|---|---|
| 商談冒頭 | 返報性・好意 |
| ヒアリング | 一貫性 |
| 商品説明 | 権威・社会的証明 |
| 比較検討 | 社会的証明 |
| クロージング | 一貫性・希少性 |
こんなイメージです。

商談の流れごとに台本を作る
AIに作らせる営業台本は、
例えば次の構成にします。
1.商談の入り口
いきなり商品説明をしない。
まず、
- 今日の目的
- 相手の状況
- 話す時間
- 何を持ち帰ってほしいか
を整理します。
2.ヒアリング
ここは質問中心です。
例えば、
- 今どんな方法で対応しているか
- 一番困っているところは何か
- その問題でどんな損失が出ているか
- いつまでに解決したいか
- 誰が意思決定するか
など。
AIには、
「Yes/Noで終わらない質問」
を多めに作ってもらいます。
3.課題の整理
聞いたことを一度まとめます。
つまり、現状では○○に時間がかかっていて、特に△△が課題ということですね。
ここで認識を合わせます。
4.自社商材の説明
ここで初めて商品を説明します。
ただし、
機能を全部並べるのではありません。
相手の課題に関係する機能だけ
を中心にします。
ここで、
社会的証明。
権威。
実績。
なども必要に応じて使います。
5.競合との違い
競合を否定する必要はありません。
むしろ、
○○を重視するなら競合商品の方が合う可能性があります。一方、今回御社が重視されている△△については、弊社の方が対応しやすいです。
という方が自然です。
6.反論・質問への対応
AIには、
- 高い
- 必要ない
- 今は忙しい
- 他社も検討している
- 社内で決められない
- 実績が不安
など、
よくある反応に対する回答も作ってもらいます。
7.次のアクション
商談の最後は、
買う・買わない
だけではありません。
- 次回提案
- デモ
- 見積
- 社内説明資料
- 上司との商談
- トライアル
など。
次に何をするかを明確にします。
台本は「分岐」させた方が使いやすい
実際の商談は一本道ではありません。
例えば価格を聞かれた場合でも、
価格を最優先している
単に予算感を知りたい
競合と比較している
では答え方が変わります。
だからAIには、
「相手の反応ごとの分岐」
も作ってもらいます。
例えば、
顧客:「少し高いですね」
↓
A:予算自体が厳しい場合
B:競合より高いと感じている場合
C:費用対効果が分からない場合
という形です。
この方が現場では使いやすい。
AIに作らせると、自分の営業の癖も見える
これも面白いところです。
営業台本をAIに作らせて、
自分の普段の営業と比べる。
すると、
「自分は商品説明が早すぎるな」
とか、
「ヒアリングが浅いな」
とか、
「導入事例をほとんど使っていないな」
と気づくことがあります。
つまりAIは、
営業台本を作るだけでなく、
自分の営業を見直すための比較対象
にもなります。
心理学は「型」として使う
今回の目的は、
心理学の原則を全部営業台本に詰め込むことではありません。
返報性。
一貫性。
社会的証明。
権威。
好意。
希少性。
これを全部入れたら、
逆に不自然になります。
必要な場面で、
「この考え方が使えそうか」
を見る。
それくらいで十分です。
最後は自分の言葉に直す
AIが作った営業台本を、
そのまま読み上げるのはおすすめしません。
商材も違う。
顧客も違う。
営業担当者の話し方も違う。
だから、
AIに最初の台本を作ってもらう。
↓
自分で読んで違和感を直す。
↓
実際の商談で使う。
↓
うまくいかなかった部分を修正する。
この繰り返しです。
台本があるだけで商談前の「ゼロ」がなくなる
営業台本が完璧である必要はありません。
実際の商談が台本通りに進む必要もない。
それでも、
商談前に一度、
「この質問をしよう」
「この反応が来たらこう返そう」
「この導入事例を使おう」
と考えておくだけで違います。
何もないところから商談に入るより、
たたき台がある方が準備しやすい。
AIには、
営業を代わってもらうのではなく、営業前の“ゼロ”をなくしてもらう。
これが今回の使い方です。
次回は実際に使えるプロンプトを公開する
次回は、
自社商材の資料をAIに読み込ませて、
- 商談冒頭
- ヒアリング
- 課題整理
- 商品説明
- 心理学の原則の使いどころ
- 競合対応
- 想定反論
- クロージング
- 次回アクション
までまとめて作る、
営業台本を作るAIプロンプト【コピペOK】
を公開します。
台本通りに話すためではありません。
一度、商談を頭の中で走っておくための台本。
AIとの相性はかなりいいと思います。
この記事で扱った書籍
『影響力の武器』
営業テクニックだけでなく、「なぜ人は行動するのか」を理解したい人におすすめの一冊です。
影響力の武器[新版] 人を動かす七つの原理 [ ロバート・B・チャルディーニ ] 価格:3190円 |
【中古】影響力の武器 なぜ、人は動かされるのか 第3版/誠信書房/ロバ-ト・B.チャルディ-ニ(単行本) 価格:2098円 |


