「この会社は、何をしている会社なのか」
ホームページを見れば、ある程度はわかります。でも、「誰がお金を払い、なぜ選ばれ、どう利益が残るのか」まで説明しようとすると、意外と難しいものです。
そんなときに試したいのが、新規上場企業の目論見書をAIに読ませて、ビジネスモデルを整理する方法です。
今回は、他社の「儲けの仕組み」を読み解き、自分の営業や事業づくりに活かすためのプロンプトを紹介します。気になる会社を1社選び、資料を用意すれば始められます。
「要約して」に、読み解く視点を加える

目論見書をAIに渡して「要約して」と頼むだけでも、会社の概要をつかむ助けになります。
ただ、それだけでは「法人向けにサービスを提供している」「顧客数が増えている」といった説明で終わり、利益が生まれる仕組みまで見えないことがあります。
そこで、今回は次の7つに分けて整理します。
| 視点 | 確認したいこと |
|---|---|
| 顧客 | 誰が使い、誰がお金を払うのか |
| 提供価値 | 顧客のどんな困りごとを解決するのか |
| 収益 | 何に対して、どのように料金を受け取るのか |
| 費用 | サービスの提供や販売に、どんな費用がかかるのか |
| 販売方法 | 直販、代理店、紹介など、どう顧客を獲得するのか |
| 継続・拡大 | 顧客が使い続ける理由や、取引額が増える仕組みは何か |
| 強みと弱点 | なぜ選ばれ、何が崩れると儲けにくくなるのか |
特に大切なのは、「売上が増える理由」と「利益が増える理由」を分けることです。
顧客が増えるたびに、人員や外注費も大きく増える事業なのか。それとも、同じ仕組みを多くの顧客に提供できる事業なのか。この違いを考えると、会社を見る解像度が上がります。
最初に用意するもの
用意するのは、分析したい企業の目論見書PDFです。資料の表紙で、会社名、資料名、公表日を確認してください。訂正資料がある場合は、あわせて用意しましょう。
事業を調べる資料としては、日本取引所グループの「新規上場会社情報」に掲載されている「上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」も利用できます。目論見書とは別の書類なので、AIには実際に渡した資料名を伝えます。
PDFを読み取れるAIに資料を添付し、以下のプロンプトを入力してください。資料が大きくて読み取れない場合は、「事業の内容」「事業等のリスク」「経営成績の分析」など、関係する部分に分けて渡します。
一部だけを渡したときは、その範囲での分析になります。読めていない箇所を推測で埋めさせないことも大切です。
コピペ用|ビジネスモデルを読み解くプロンプト
【 】の中を書き換えて、資料と一緒に使ってください。
あなたは、企業のビジネスモデルをわかりやすく解説する
リサーチ担当です。
添付資料を読み、この会社が
「誰に、何を提供し、どのように売上と利益を生んでいるか」
を整理してください。
目的は、他社の儲けの仕組みを学び、
自分の営業や事業づくりのヒントにすることです。
■対象
・企業名:【企業名】
・資料名、公表日:【表紙に記載された情報】
・訂正資料:【あれば添付。なければ「添付なし」】
・自分の仕事や商材:【任意。例:法人向けの設備販売】
・特に知りたいこと:【任意。例:代理店の活用、継続収益の作り方】
■分析のルール
・最初に、読み取れた資料名と範囲を示してください。
・読めない箇所や不足している情報を明記してください。
・基本的に添付資料を根拠とし、外部情報を混ぜないでください。
・資料に記載された事実、会社側の説明や見通し、
あなたの解釈・仮説を区別してください。
・重要な説明には、資料名と該当ページを付けてください。
PDFのページ順か、本文の印刷ページ番号かも明記してください。
・非開示の数値や契約条件を推測で埋めず、
「資料では確認できない」としてください。
・数値には対象期間、単位、連結・単体の区別を付けてください。
・複数事業がある場合は事業別に整理し、
全社の利益を特定事業の利益として扱わないでください。
・専門用語には短い説明を付けてください。
■出力してほしい内容
1.この会社を一言でいうと
「誰の、どんな課題を、どう解決して収益を得る会社か」
を、100字程度で説明してください。
2.ビジネスモデルの全体像
以下を「項目/内容/根拠ページ/未確認事項」の表にしてください。
・利用者と支払者
・顧客に提供する価値
・商品、サービス
・収益源と課金方法
・主な費用
・顧客を獲得する方法と販売パートナーの役割
・継続利用や追加購入につながる仕組み
・競争上の強みと、それを裏付ける情報
3.商品・サービスとお金の流れ
顧客、自社、仕入先、販売パートナーなどについて、
「誰から誰へ/何を提供するか/誰が誰に何の代金を払うか」
を表で整理してください。
資料で確認できない関係は明記してください。
4.売上と利益が増える条件
・売上を、顧客数×単価などの要素に分解してください。
その事業に合わない式は無理に当てはめないでください。
・売上の拡大に伴って増える費用を整理してください。
・利益率が改善する条件と、改善を妨げる要因を説明してください。
・資料の実績数値で裏付けられることと、仮説を分けてください。
・赤字の場合は、赤字であることと黒字化に必要な条件を分けてください。
5.仕組みの弱点
顧客の集中、解約、人材不足、仕入先への依存、
販売パートナーへの依存など、資料に即して
重要なリスクを3つ挙げてください。
それぞれ、売上や費用にどう影響するかも説明してください。
6.自分の仕事に活かすヒント
自分の仕事を記入している場合は、
応用できそうな考え方を3つ提案してください。
それぞれ「学べる仕組み/応用案/必要な条件/小さく試す方法」
で整理してください。
応用案は、資料上の事実ではなく提案と明記してください。
仕事が未記入の場合は、一般的なヒントにとどめてください。
最後に、理解を深めるために原文で確認すべき箇所を
3つ以内で示してください。
回答を見るときは、課金方法と費用をセットにする
AIの回答が出たら、まず「収益源」と「主な費用」を並べて見てみましょう。
たとえば、月額料金を受け取る事業でも、顧客ごとに手厚い運用代行が必要なら、その分の人件費がかかります。「月額課金だから利益が積み上がる」とは言い切れません。
以下は、考え方を説明するための架空の例です。特定企業を分析した結果ではありません。
| 資料で確認できたとする情報 | そこから考えたいこと |
|---|---|
| 初期導入費用と月額利用料を受け取る | 導入時だけの売上と、継続する売上はどのくらいあるか |
| 顧客ごとに導入支援を行う | 顧客増に伴い、支援担当者の増員が必要になるか |
| 販売代理店を通じて契約を獲得する | 販路が広がる一方、手数料や支援費用はどうか |
| 利用人数に応じて料金が増える | 既存顧客の利用拡大が売上増につながるか |
こうした問いまで出てくると、「何をしている会社か」から、「どんな条件なら利益を伸ばせる会社か」へ理解を深められます。
追加プロンプト①|「強み」の説明を深掘りする
「独自の技術」「高い顧客満足度」と書かれていても、それだけでは顧客が選ぶ理由を十分に説明できません。
AIの回答が抽象的なら、次の質問を追加してみてください。
先ほど挙げた競争上の強みについて、深掘りしてください。
・顧客にとって、具体的にどんなメリットがありますか?
・価格、品質、手間、時間、リスクのどれに関係しますか?
・他社への乗り換えを難しくする要因はありますか?
・その説明を裏付ける数値や事例は資料にありますか?
会社が強みとして述べていることと、
資料で裏付けられることを区別してください。
根拠が不足する場合は、その旨を明記してください。
追加プロンプト②|自分の営業に置き換える
他社の仕組みを知った後は、自分の仕事に置き換えて考えてみましょう。
たとえば設備販売なら、納品後の保守や定期点検をどう組み合わせるか。代理店営業なら、販売パートナーにも利益が残り、提案を続けてもらえる条件は何か。そうした問いにつなげられます。
私は【業種・仕事内容・販売している商材】に携わっています。
今回の会社から学べる仕組みのうち、
自分の仕事に応用できそうなものを1つ選んでください。
そのうえで、以下を整理してください。
・顧客にとってのメリット
・自社の売上につながる理由
・追加で発生する費用や業務
・代理店など関係者がいる場合、その相手のメリット
・実行前に確かめる条件
・まず1社で試すなら何をするか
元の会社と自社の違いを踏まえ、
そのまま真似できると決めつけないでください。
AIの回答は、根拠ページに戻って確かめる
AIの文章がわかりやすくても、それだけで分析が正しいとは判断できません。
特に、「この料金を誰が払うのか」「どこに費用がかかるのか」「強みを何が裏付けているのか」は、該当ページを開いて確認しましょう。
また、目論見書からわかるのは、その資料が扱っている時点の情報です。現在の事業を理解したい場合は、その後の決算資料などを別途確認し、時点を分けて整理する必要があります。
AIに全体像を整理してもらい、気になった点を原文で確かめる。 この往復が、読み解く練習になります。
他社の仕組みを、自分の仕事の問いに変える
ビジネスモデルを学ぶ面白さは、知らなかった会社に詳しくなるだけでなく、自分の仕事を見直す視点が増えることにあります。
「売り切りの商品に、継続して役立てるサービスを加えられないか」
「顧客が増えたとき、費用も同じように増えていないか」
「販売パートナーが提案したくなる理由を作れているか」
目論見書とAIを使って、こうした問いを引き出してみましょう。
まずは気になる企業を1社。誰がお金を払い、その対価は何で、どこに利益が残るのか。 今回のプロンプトで整理するところから始めてみてください。


